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by alpaca

「城」主人公Kは測量師なのか



髙木敏克
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「じゃ、どんなお仕事をなさってるの」
「測量師です」
「それはどんなことをしますの」
Kは説明をした。その説明を聞いて、お内儀は欠伸をしただけだった。
「あなたは本当のことをおっしゃらないのね。なぜ本当のことを言って下さらないの」
         ー第20章 お内儀の追求

小説「城」に出てくる主人公Kは、はたして測量師なのか、あるいは単なる肩書きだけで何者でもないのだろうか。

「あなたは、まったく何者でもない。一文の値打ちもない、まるっきりの無なのよ。あなたは測量師でいらっしゃる。これはあるいはひとかどのことかもしれないわね。つまり、あなたはひとかどのことを習って身につけていらっしゃるわけね。でも、それでもって何もすることができなければ、やっぱり、まるっきり無だわ」
         ー第20章 ベーピの告白

Kは測量師だと自称しているが、小説の中で測量の仕事はまったくせず、城に対しては「契約」だけを求めている。あたかも契約することが仕事だと言わんばかりである。測量において契約自体が仕事になるわけはない。契約だけが仕事になるのはカフカの本業の保険業務くらいである。契約にだけこだわるKの仕事は保険かもしれない。
つまり、測量師としてのKは何者でもないが、保険師としてならKは何者かである。
言い換えれば、Kの行動は測量師としては説明がつかないが、しなやかの保険業者の行動としてならKの行動は読み取りやすい。測量士はKの影であり、何もできそうにない二人の助手はカフカが飼っている二匹の犬の影である。

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by glykeria | 2020-07-15 23:01 | 評論 | Trackback | Comments(0)